感想文

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間宮星廉について

 


極夜をみて、間宮と有賀の話には一区切りがついたような気がして、ならば2人について私の考えを書こうと持っていたらいつの間にか悠久と終焉の白いはざまから神様の融合を見届けていました。時間かかりすぎた。

 

間宮の事が好きだからこそ、過大評価も過小評価もしたくなくて、等身大の間宮を突き詰めたいなと思ってメサイアシリーズを見続けています。最早鋼から出てきてないのに悠久にはもちろん暁にも月詠にも間宮を感じる瞬間があって、私は彼のそういうところが大好きです。ただの私の思い込みかも知れないけど。

 

やっぱりシリーズの中で初めてのメインサクラ候補生の死、しかもへなちょこそうなのが実は裏切り者だったっていうのはかなり衝撃的で苦しいものがあるんですけど、そこを乗り越えるとちょっと間宮に近づける気がしています。

 


衝撃や苦しみを乗り越えるという点について話をすると、私は結論を(有賀間宮いつきの)3人でメサイアという方向にあんまり持って行きたくなくて。

だってメサイアって2人で組むものじゃん!って言ったらそれで終わりなんですけど、詳しく理由を書くと、間宮の出来事って多分チャーチにとっては割とよくあることで、この結論にはどうしても観客の願望とか、鋼を見た時の衝撃が練りこまれている様な気がしてしまうからです。だって颯真と柊介とハルキと堺の4人でメサイアって思わないじゃないですか。

それにこの結論だと有賀⇄間宮、有賀⇄いつきのことは考えていても間宮⇄いつきのことをあまりにも視野から外しているような感覚になります。この2人、鋼で一瞬会話したくらいしか接点がないんですよね。あとは全部間宮が死んだ後にいつきが知っていくだけ。メサイアだって言えます…?

私はそんな状況なのに、間宮を殺した事実ごと有賀にメサイアとして体当たりしてくるいつきを尊重したいなぁと思います。それに、有賀のメサイアにはなれなかったというのも間宮の大切な大切な要素だと思います。
だから私は他のメサイアペアと同じく、1:1で、有賀にはいつきだけのメサイアでいて欲しいし、もちろんいつきにも有賀だけのメサイアでいて欲しいです。

 

 


さて、ではそんな有賀のメサイアになれなかった間宮について、感情偏見妄想込みでぐるぐる考えた事をつらつら書きます。

 

この2人が歩んで来た道を振り返ると、本当に本当に、骨の髄まで噛み合わないなぁって思います。
暗殺組織で暗殺者として育てられた人間と、表向きだけでも平和の中に生まれて平和を祈ってバイオリンを弾いていた人間。もうまず生まれが対極。

 

そんな2人が唯一交差したのがかの有名な第一回世界の改心調印式典なのですが、ここでの出来事の作用の仕方も噛み合わないしなんならここから2人の判断と行動もびっくりするくらい不幸になる方へ向いていくんですね…本当にこの世の不条理というか、皮肉が押し込められている作品ですねこれ…


人を殺して殺して殺しまくって、疲れ果てるくらい人殺しに馴染んだいわゆる「戦争」側の有賀は、「平和」側の間宮の音楽を聴いて心を入れ替え人間に戻る事が出来ましたが、対する「平和」側の間宮は、テロが目の前で起こる事、目の前で人がたくさん死ぬ事などなど「戦争」側の出来事に全く免疫がなく、さらには身内が凶悪な人殺しというトドメをくらいメンタルが壊れ、大人に丸め込まれて流れ着いた先はテロ組織でした。

間宮は「平和」は知っていたけど、対極の「戦争」を知らなかった。これって本当に「平和」を知っていたと言えるんですかね……?

 

皮肉にも「戦争」から1番遠い場所で「平和」を祈ってバイオリンを弾いていた間宮が、「戦争」側の出来事に巻き込まれて出来た事は、死者の安息を願うことだけでした。間宮は武器も記録媒体も実行犯を殺す手段も何も持ち合わせていません。

だから既にテロによって死んでしまって、もう生きていない人達を弔うことしかできなかった。祈る事、願うこと等しかできない自分の無力さを痛感するには十分すぎる出来事だと私は思います。


調印式典の観客は見た目はほぼみんな「平和」側の人間で、そんな観客は目の前でたくさん死に、「戦争」側のテロ実行犯はのうのうと生きて帰る。晴れの舞台で自分の信じてきた「平和」の大敗をまざまざと見せつけられて、間宮はどんな気持ちだったんでしょうね……

 

一方有賀は、わずかに残っていた人間としての感情を間宮の演奏に揺さぶられ、人間に戻る決意をし、父親を殺し組織を壊滅させます。ここで選ぶ手段が対話ではなく父親の始末と組織の壊滅なところが、有賀の「戦争」慣れがにじみ出ていると思います。有賀は「戦争」慣れしていたからこそ、自分の判断と行動で未来を切り開くことができました。

 


そして更に辛いのが、テロ以降間宮は純粋なバイオリンの音色を失うという裏設定があるので、実質これが最後の間宮の本領を発揮した演奏です。有賀はこの演奏に人生を変えられたんです。
生まれも育ちも違う2人が交わった事で、2人の立場が大きく変わった瞬間。相性が最高すぎるし最悪すぎますねほんと…

 

 

 

メサイア展示イベントのトークショーで西森さんがおっしゃっていたのですが、
Q間宮はいつ裏切ったのか?
A 有賀との絆を感じた時
これを聞いたとき、鳥肌が立ちました。

 

もう本当にこの2人は救いようが無さ過ぎて最高です。

 

親がテロリストだったと知って全てがどうでもよくなった間宮は、ぶっちゃけ使役されていただけなので心から北方入りしたわけではなくかといってチャーチに肩入れするわけでもなくずっとどっちつかずだったけれども、有賀と絆を感じると、自分の行為が裏切りであると浮き彫りになってくるんです。うわ〜〜!こういうところに、間宮の根っこの部分が垣間見えると思います。と同時に、間宮と有賀のトレードオフというかシーソーゲームというか……複雑な関係も垣間見えて苦しくなります……私の中で適切な言葉が見つからないです…

 

絆、信頼とプラスになるはずの感情が間宮の手にかかると全部毒になり間宮自身に襲いかかる。
じゃあ離れればいいというわけでもなく、離れれば離れるほど信頼されてないんじゃないかと不安になる、そして近づけは近づくほど裏切っている実感がわいて苦しくなる、この無限ループ……そりゃごめんとしか言えなくなるわけです……

有賀も有賀で、淮斗が言ってましたが優しすぎる、相手に合わせすぎる傾向があり、自分に踏み込んでこない間宮に踏み込む事も出来ず困った顔をしていても事情を聞く事も出来ず足踏みをするしかなく…なんで君たちそういうところだけ噛み合っちゃうかなぁ…

 

でも間宮は有賀というメサイアとの微かな微かな本人たちが自覚しているかすら怪しい絆の存在があったから狂いきれずに、北方とチャーチの間で揺れて揺れて揺れて迷い苦しみもがき続けるハメになり、あれこれって…………月詠でいつきが言ってた事と同じでは…………??????気づいた時めっちゃ鳥肌が立ちました。まさしく、有賀といつき1:1で向き合ったからこそたどり着けた結論だなと思います……
有賀と間宮の間にも、メサイアシステムの抑制力が作動してた……めちゃくちゃ一方的だけど…………好き……………………めっちゃメサイアしてるじゃんか…………
これが死んで全て終わった後にわかるのが最高に間宮って感じです。好き。

 


そして鋼後半、間宮が自分がショートヘアであると打ち明けるシーン。嘘だと言ってくれ間宮!ごめんね、本当のことなんだ…で有名なところですね。月詠死ぬかと思いました。
今まで噛み合ってこなかった2人がここで噛み合うはずもなく、有賀はこれが終わったら間宮をご飯にでも誘うつもりと間宮との次を考えているのに、間宮は間宮レポートの入ったカプセルを飲み込み有賀と自分の終わりを考えていました。(鋼の様に有賀に殺されてチャーチに回収されるパターンだけではないと思いますが…)


もう、2人で同時に真実を打ち明けたら引き返せないところまで来てしまっていました。

そのあとは間宮の今まで歩んで来た人生と嶺二さん暗殺シーンの回想…間宮の事理解するのにこの独白シーンしかないの本当にキッッツイ…
キッッツイながらにこの独白シーンを見て感じたのは、間宮を裏切り者にしたのはこの世界なんだなって事です。世界が、ずっとずっと間宮の事を裏切り続けて来たんですよ。


少なくとも調印式典でバイオリン奏者をしていた時点では間宮は何も悪いことをしていないのに、目の前で大勢の人が死に、実行犯の顔を見て狙われるようになり、両親はテロリストと知らされ、ワールドユースの広告塔になればそれは北方のポケットで、裏社会を覗いて見れば調印の裏をかき平和からは程遠い世界が広がっている。

「この世界は全部嘘」って思うしかないじゃないですかこんなの。間宮の目に映る世界は全部嘘ですよ。

 

 

その上ツツミタカヤと我妻が手を組んで「戦争」慣れしていない間宮を使おうとしたら、もう間宮にはなす術なしじゃないですか。実際間宮は「でも彼(ツツミタカヤ)は俺に教えてくれた。人間はとてつもなく愚かであると言う事、全部壊す以外に、救いの道はないって…!」と言っています。完全にツツミタカヤの手のひらの上…まさしく間宮はツツミタカヤが自分の理想のために作り出したモンスターです……

 

 

こんな心理状況の中でも元は「平和」側だった間宮が、「戦争」側から平和を作ろうと画策しているチャーチに二重スパイとしてでも入ったら、全てがどうでもよくなっているとは言え心揺らぎますよね…チャーチ側について行きたくなるというか…でも北方からの要求はエスカレートしていくという…

 

 

そして皮肉なのは、結局こういう状況に陥るのを回避できなかったのも、間宮が「戦争」慣れしてないからなんですよね…「平和」側にも多少の嫉妬や僻みがあったとしても、「戦争」側の悪意とはベクトルもレベルも違うじゃないですか。ちょっと前まで一般人だった間宮にこれに気づいて回避しろ…なんて無理ですよね…
この散々言っている「平和」側の戦争慣れの無さ、「平和」側(表社会)が平和を作った気になっているっていうのはめちゃくちゃ危ないなぁって思います。

 


長く戦ったあとの本当のラストシーン、手にするのは間宮はバイオリン、有賀は暗殺者時代のお守りの自殺用の銃でした。ああ切ない。やっと2人で真実を言えたら、帰ってくるのはやっぱりここなんですね…………


あの時殺してくれていれば、こんなに悲しい思いはしなくて済んだのになぁって、めちゃくちゃ切ない台詞すぎませんか。でも、こんなに悲しい人生を歩んできて、死にかけの状態でお前を殺すはずだったけど、お前の音楽聞いて心変わりしたから殺せなかった…って言われたら間宮ならこう言いたくなりますよね…


間宮の悲しみの生みの親は有賀なんですよね。間宮はあの調印式典で本当は有賀に殺されるはずだったのに、音楽で世界が平和になれば…って願いを込めた演奏で知らないところで自分の命を拾ってしまったが故に、こんなに辛い思いをしなくてはならなくなった。苦しい…


そりゃ有賀もこんな男を自分の手で終わらせたら、誰も悲しまない、苦しまなくていい世界を作りたくなりますよ…

 

結局、「戦争」と「平和」、1番遠いところにいた2人は、皮肉にも平和調印式典で交わったことにより最後は「生」と「死」とまた別のベクトルで遠いところに行ってしまいました。とことん噛み合わね〜〜!!!

染谷さんが役をもらった時から死ぬと知っていたのと同じ様に、間宮が有賀のメサイアになるルートも結局最初からどこにも存在していなかったのかなぁって思います。それこそ時間軸で言えば銅とか漆黒の前からずっと。
噛み合わなさすぎてもはや噛み合ってる様に見えてくる2人がこの結末を迎えるのは必然だったのかなと。

 

そして、間宮が嶺二さんを暗殺して引き返せなくなったのと同時にチャーチにやってきたいつきが、有賀とメサイアを組むのは心臓がキュッとなります…そういうとこだぞ一嶋…

 

 

また深紅からの有賀と間宮の話をすると、話が進むにつれてどんどん間宮の「生」が必要とされなくなっていく事に愛おしさを感じます。

 

 

 

もうここまでくるとメンヘラみたいな言い方になってくるんですけど、間宮という存在や概念は必要だけれども間宮が生きていることは全く必要とされなくなっていく、こんなに綺麗に間宮が過去の人になっていく過程を見ることができて本当に本当に幸せです。

 

 

そしてストーリーから退場してもみんなに大切にしてもらえる役を好きになれて本当に幸せです。悠久の初日、いつきがバイオリンを持って出てきた時の客席の悲鳴はずっと忘れられないと思います。クロニクルで西森さんや毛利さん、スタッフさんでバイオリンの扱いを何度も議論した事を知って、本当にファン冥利に尽きるというか、ファンとしてこんなに嬉しいことはないなって思いました。

 

 

悠久、もちろん間宮は出演していないので姿かたちは見えなくて、声すら聞こえないのですが、それでも間宮星廉という概念は舞台の上にあったと思います。イメージとしては大気として対流してる感じですかね…笑

 

有賀の誰も苦しまない、悲しまない世の中を作りたいという願いは有賀の確かに通ってきた間宮との過去から生まれたもので、でも確かに「有賀個人」の思想であり、そこにやっぱりとんでもなく有賀と間宮の関係性が現れていると、そう思います。この思想は有賀と間宮の関係から生まれたのに、間宮はこの思想の1番の敵で1番最初に離脱したんですもんね……

 

 

そしてこの事を全部理解した上で有賀に全身全霊で体当たりするいつきは、本当に輝いて見えます。彼も彼でとてつもない悲しみや苦しみを乗り越えてきて、でもその悲しみや苦しみは無二のものだから誰もお互いに理解できなくて。でも理解しようとするからまた苦しみが生まれる。でも大事なのは理解じゃないのかなって月詠を見て思いました。

 

 

そして、私はメサイアは影青から入ったので月詠で初めて生で有賀のいないメサイアを見て、かつては「平和」側にいた間宮が「戦争」側に落ち死に、「戦争」側にいた有賀は「平和」を願いながら「戦争」の中で生きていくというこの落ち着きかたが大好きだなと思いました。

 私は淮斗は死んだとは思っていないので、片方死ぬという初めて同じ展開を迎える月詠を見て、そう思いました。メサイアが片方死んだから苦しいのではなくて、この経歴を持った有賀と間宮がこの結末を迎えたから苦しいんだなと。もちろん月詠も頭痛くなるくらい泣いたのですが…笑

 

 

第2世代は割とアイデンティティがテーマになっていることが多いと思っていたので、余計にそう思いました。そして長江くんは2人の最初の試練と言っていたので万夜と小太朗には、また別の展開が待っているんだろうなと思うとそれもまた今から苦しくて仕方ないですね……

 

 

かつての間宮の願いは、間宮1人の力では叶えられなかったけれど、有賀といつき、また他のサクラが零杯ノ日という形で叶えてくれると私は信じています。そうなることを夢見て、有賀の中の間宮を垣間見にまた劇場に足を運びたいと思います。